ごめんねって言ったら、クッションを投げられそうになった。
エレーナにコロナをうつしてしまった。本当に申し訳なかった。だけど彼女は「ごめんねって言わないで!別にコロナになりたくてなったわけじゃないんだから」って。
Sofiane Pamartの朝
予定よりも早く、10時に起床。下へ行くと、お母さんが朝食の準備をしてくれていた。
今日の音楽はSofiane PamartのPlanetというアルバム。本当にどこかで聞いたことがあるなぁって思ったら、エレーナが僕たちのプレイリストに追加してくれていた曲だった。聞いたことがある曲はなぜか親近感がわいて、好きになる。ここ最近知ることができた曲も、すべてエレーナのおかげ。

朝食はバターとジャムのパンとコーヒー、みかん、昨日ベーカリーで買ったパン。僕がコロナになったせいで、みんなに迷惑をかけてしまって本当に申し訳ない。
エレーナとお母さんはコロナのテストを受けに病院へ。僕はその間に朝食をとって、洗い物をしていた。エレーナが帰ってきて、なんとポジティブだったと。
僕は改めて、申し訳なさを感じた。ごめんねって言ったら、「ごめんねって言わないで!」って。彼女はセメスターの一番最初に行けないことにショックを受けていた。だから、ごめんねって言うと、「ごめんねって言わないで!!」って。僕はごめんねごめんねごめんねごめんねって言ったら、クッションを投げられそうになった。
だけど、彼女は本当にポジティブにジョーク交じりにそれを言っていた。本当に温かくて、おもしろい人だなぁって。

家の外に猫がいた。いつもエレーナの家の庭に来るらしい。きっと野良猫ではない。太っているから。だけど、自分の住んでいるところが好きではなくて、エレーナの家に来ているのかもしれないって。猫ちゃんが可愛すぎる。僕は完全に犬派なんだけど、猫も有りだなと。だけど、やっぱり犬派。
兄弟はいる?
エレーナは部屋に戻って、マスターにアプライする大学を調べていた。
そういえば、兄弟はいるのかなぁって聞いた。壁に貼ってあるアルバムの写真に兄弟のように写っている子がいたから。エレーナに兄弟はいなかった。子供のころの写真は本当にかわいい。今ももちろん素敵だけど、やっぱり子供のころの笑顔は純粋で、ピュアで。

僕はもっとお話したいって言いたかったけど、言えなかった。お話するのが楽しいのに。明日の朝に出発しなければいけないので、少しだけ荷物整理をする。
サラミとマロンクリーム

お昼ごはんはサラミとエメンタールチーズ、バゲットとジャム、サラダ。とても豪華だった。

エレーナがあとからマロンの甘いクリームを持ってきてくれた。すごく美味しかった。僕が暖房の側にいると、エレーナはタンポンのような温かいやつをくれた。いつも生理の時にお腹を温めるために使うらしい。お腹に入れると、本当に妊娠している気持ちになった。温かい。
ジャズが流れる優雅な午後

僕はずっと日記を書いて、夜の5時になった。部屋ではジョン・コルトレーンのジャズをかけている。隣でエレーナは大学のリサーチ。下ではお母さんがドリス・デイの歌を流しながら、牛肉のワイン煮込みを作っている。
なんて優雅な日なんだろう。本当にこの雰囲気が大好きだった。いつも一緒にいるのではなく、寂しくなったら下へ行きお話して、一人になりたくなったら音楽を聞きながら個人の時間を過ごす。本当にこういう家庭が好き。僕も本当にそうだから。
夜ご飯の前に、エレーナは昔のアルバムを取り出して見せてくれた。大学の成績や、昔のお絵かき。僕のお母さんと同じように、エレーナのお母さんも子供のころの作品をとっておいていた。本当にかわいかった。

そして、5年前に日本語を勉強していた頃のテキストを見せてくれた。その数、本当に1000ページくらいの教材があった。ここまで勉強していたなんて全く想像していなかったから、驚いてしまった。
文法にいろんな間違いがあって、僕がそれで笑うと、彼女はすごく不機嫌になった。僕がそれを持って逃げると、「待て〜〜」って取り上げられたり。彼女は本当に完璧主義。最初から完璧にこなすことなんて絶対に無理なのに。でもいいところは、それを人に押しつけないところ。彼女の問題だからほっといてっていう感じ。それが本当にすばらしい。
最後の晩餐

最後のディナーは僕のリクエストの、牛肉のワイン煮込み。大学生の時に作って、めちゃくちゃ不味すぎて捨てたやつだった。本当は美味しいのがわかっているんだけど、料理が下手すぎて作れなかった。その料理を、お母さんがマッシュポテトと一緒に作ってくれた。

エレーナと僕はコロナになってしまったので、おかげで食を一緒にできる。ごはんを食べている時は、史上最高に打ち解けていた。

赤ワインとマッシュポテトが最高に美味しくて、すぐに酔ってしまった。エレーナは夏にアルバイトでやっていた仕事のことを話してくれた。ここから車で5分くらいの農場で、めちゃくちゃ狭いところに入って、朝6時からとうもろこしの花をとっていく仕事。
手作業で、手袋をして。途中で蜘蛛がいたら、避けてその花はとらないだとか。6時間働いて、すごく疲れてそれから一日中ずっと寝ていたらしい。
今年はインターンシップを絶対に見つけなきゃいけないと言っていた。彼女の大学は私立で、お金持ちがたくさんいる学部だから、嫌らしい人もたくさんいるらしい。目立ちたがり屋のDrama Queenもいるだとか。
そういう人には、早く話を終わらせようと目を合わせなかったり、あはははって笑って、話したそうにはしないらしい。僕と100%一緒だった。僕も嫌な人は目を合わせないし、近づかないし、感じ悪くする。そうすれば近寄ってこない。本当に同じだった。

コロナでお母さんのお祝いができなかったり、いろんな問題が出てくると言っていたので、僕はフランス語で「je suis désolé」と言った。「ごめんって言わなくていいって言ってるでしょ!」って。僕は「いや、エレーナはdon't say sorryって言ったでしょ?だから僕はSorryって言ってないよ。je suis désoléって言ってるんだよ」って言ったら、「you are also annoying」って。本当にこういうエレーナが好きだった。
彼女が「じゃあ私もSorryって言うわ」って言ったので、僕は「言いたいだけ言えばっ。ふっ。」って返した。そしたらブスっとして、ナプキンを投げてきた。本当に面白すぎた。
僕がナプキンを折っていると折り紙が折りたくなって、エレーナに探してもらったけど、トゥールーズの家にあるらしくて今はない。A4用紙をもらって鶴を折った。
彼女は本当にトーカティブだった。Introverted=not talkativeではないとエレーナは言う。友達にはすごくトーカティブになるけど、見知らぬ人には聞くだけだとか。すごくわかる。学校でおとなしい人ほど、家ではめちゃくちゃ話す。僕も全く同じ。だけどエレーナには負けるほどだった。
ピアノで、エレーナが一番最初に教えてくれたSinging in the RainやFly Me to the Moonを演奏した。それからレミーのおいしいレストランの曲も。
最後にソファーで奨学金の話。僕は16000ユーロを返さないといけなくて、10年くらいかかる。だから自分がリッチになって、すぐに返してやると伝えた。エレーナも同じくらいローンを借りているらしく、2031年くらいまで返さないといけない。だけど僕たちはリッチになるから、大丈夫。
行きたい国の話もした。エレーナとお母さんはキューバとアルゼンチンと日本に行きたいらしい。日本に来た時はいつでも僕の家においでと伝えた。
明日も早い。シャワーを浴びて、みんなにおやすみを言ってから、エレーナとお母さんに向けて手紙を書き始めた。




