〜心のままに歩く旅〜
古いテレビと質素なご飯に、愛を感じた夜

古いテレビと質素なご飯に、愛を感じた夜

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古いテレビと質素なご飯の中に、エレーナとお母さんの温かい愛を感じた夜

エスカルゴって、カタツムリのことだったのか。

フランスに来て1週間以上経つのに、知らなかった。エレーナに写真を見せられた瞬間、驚きが隠せなかった。

コロナの朝

朝10時30分に起きた。エレーナとお母さんはもう起きていて、それぞれご飯を済ませていた。

エレーナが僕の部屋に紙を置いてくれていた。「朝ごはんできてるよ、下においで」と。朝ごはんは2切れのパンにバターを塗って、ジャムとコーヒー。日本人の僕にとっては物足りない。日本だと、ごはんと味噌汁とお肉と野菜とつけものとコーヒーとオレンジジュースと、たくさん食べるから。だけど、ジャズが流れるなかで食べる朝ごはんは、とても優雅だった。

食器を洗う。僕が唯一できることが食器洗いだったので。

コロナに感染したことが判明して、体が重い。昨日、旅行から帰ってきてからずっと家にいたので、さすがに外出したくなった。パン屋さんでお金を崩してから散歩しよう。エレーナと一緒に出かけることにした。

エスカルゴの衝撃

年賀状を出してから、パン屋さんへ。エレーナに50ユーロを使ってもらってパンを2つ買い、残りをもらった。やっと薬と切手代を返せる。

それから一緒に散歩へ。エレーナがパンを持ってくれて、地元を歩いた。自然が豊かで、広大な景色が広がっていた。お母さんはよく散歩でここに来るらしい。

歩きながら、いろんな話をした。留学の話。エレーナは本当はリトアニアに行きたかったらしい。一番安くて建築も綺麗だから。

キプロスはフランスよりもレベルが低くて、すごく簡単らしい。僕はロシアにいた時は単位がもう足りていたから、授業をさぼってシベリアに行っていたことを話した。エレーナはキプロスで風邪以外は全部出席していたらしい。偉すぎる。

僕はフランスで過ごす時のプランを全く考えていなくて、なにも知らないので、どうしようかなぁっていうことをお話していた。

そして、エスカルゴの話になった。友達にエスカルゴを食べようと誘われたけど、さすがに無理だと言ったら、エレーナが写真を見せてくれた。

僕が食べたのは海の貝で、本当のエスカルゴは「カタツムリ」だった。

まじかよ。

カタツムリのフランス語がエスカルゴだなんて全く知らなかった。エレーナは見た目で判断して食べたくないらしい。「もしその味がレモンだったらどうする?」って聞いても、「嫌だ」って。

幼稚園を横切ると、たくさんの子供がいた。エレーナは子供はうるさすぎるし、よく泣くから本当に嫌だと言う。ボーイフレンドやいいアパート、いい暮らしがしたいし、いい仕事がしたい。旅行もしたい。だけど子供と結婚はなくてもいい人生は送れるというのが、彼女の人生観。

僕は結婚もしたいし子供もほしいので、そこは一致しなかった。だけど、しっかりと軸を持って生きているところは尊敬する。

ガレットとトマト事件

帰ってから薬とスタンプ代金の15ユーロを渡して、上で休憩していた。突然、体がどんどん重くなって、いてもたってもいられなくなった。いままで味わったことのない倦怠感。頭も体も重くて、まるで石になったように沈んでいく。散歩で肺を使いすぎたんだと思う。コロナって本当にやばい。

お昼ごはんに、エレーナがフランス北部の料理を作ってくれた。ガレット。ベーコンと卵とチーズを包んだクレープ。

パルメザン、ゴートチーズ、ヤギのチーズ。好きなチーズを選んでって言われたけど、どれがいいかわからなかったから四種類すべて味わった。やっぱりパルメザンが一番よかった。きつい匂いのチーズは僕もお母さんも好きではなかった。

そして、そこにトマトが10個あった。

僕はトマトが好きではない。だけど、せっかく考えてくれたものだから、すべて食べた。昔は食べたら吐きそうになっていたけど、今はそこまでではない。人生で一番多くのトマトを食べた日だった。

エレーナにそう伝えたら、若干怒り気味だった。「なんで嫌だったら食べないの!なんで嫌いって言わないの!」って。日本では出されたものは食べるのが普通だからだよ、と言ったけど、まだ不機嫌だった。嫌なのに食べないという選択をしないことが、彼女には理解できないらしい。フランスではきちんと自分の意見を持つことこそが大事で、「嫌ならしない」、これこそが自由の象徴だから。

おかわりが欲しかったら言ってねと言われたので、下へ行って作ってもらった。エレーナがパルメザンを入れて作ってくれた。とても美味しかった。

古いテレビと温かい愛

部屋に戻って本を読んだ。ナヴァルというシリコンバレーのアイコン的存在についての本。群れから出ろ。常に価値観を更新し続けろ。たくさんの人と関わり、常に対等な立場でいろ。実際に見てもいないのに、人から聞いたからとか、テレビで見たものは信じるな。目で見たものだけを信じろ。立派な人と友達になりたいならば、自分も立派な人になれ。本当にそうだと思った。

夜になって、エレーナが栗のスープの試供品みたいな感じで、すごく少量を持ってきてくれた。好きかどうか。嫌いだったら作らないし、好きだったらって。もちろん好きだよ。なんで聞くの?って聞くと、「昂汰は嫌いな食べ物を言わないからだよ!」って。それに、僕はコロナのせいか、昨日の夜ご飯のパンプキンスープをトマトスープだと誤解していた。味覚症状が出ているなぁとしみじみ思う。そういえば、彼女はネガティブなことが起こると、いつも「Nice!」って可愛く言う。それがなんか病みつきになる。

夜ご飯は栗のスープと、バゲットとベーコン。簡素な食事だけど、健康にはいい。

夜ご飯を食べながら、しみじみ感じた。エレーナは自分の家のことを貧乏で、お金がないってよく言う。確かに、朝も昼も夜も質素だし、日本の食事に比べたら圧倒的に質素だと思う。だけど、そこになにか温かさや優しさ、美しさがある。ベーコンがはさまれたバゲットを食べた時は、涙がうるっとなってしまうほど、とてつもない愛を感じた。

テレビも古すぎて、よくとぎれとぎれになったり、横棒が入ったりする。車もとても小さくて後ろにドアがない。だからこそ、そこに味がある。すべて最新式ってなにかつまらない。エレーナとお母さんの物語の中で、そのテレビや車が本当に愛おしく感じる。二人で生きてきて、最新式の車やテレビだと、なぜか合わない。古いテレビだからこそ、二人の人生のすばらしさがにじみ出ている。そこには、なにか温かいものがある。

それに、僕が作業をしている部屋にはエレーナの写真がたくさんありすぎて、どこを見てもエレーナの写真があるものだから、どうしても親近感を感じて、温かみを感じてしまう。

明日が最終日ということで、お母さんとエレーナが特別にフランス料理を作ってくれるらしい。赤ワインの牛肉煮込みかシチュー。僕は牛肉の赤ワイン煮込みをお願いした。

白雪姫と、殻を破れない僕

スーパーグルーを貸してもらって、ジョージアで壊れてしまったセラミックのリングをひっつけることができた。朝パン屋さんで買ったケーキをシャワーの後に食べた。とても美味しかった。

エレーナとお母さんは映画を見ていた。白雪姫の実写版。フランスではなんと31チャンネルあって、お金を払えば200チャンネルあるらしい。ニュース、ドキュメンタリー、映画がほとんどで、毎日映画が上映されるんだとか。日本では7チャンネルくらいしかないから驚いた。それに、すべてフランス語で字幕が全くない。これがフランスかぁ!って感じ。

エレーナはディズニーの白雪姫が好きではないらしいけど、この実写版はストーリーが変えられているから好きらしい。

コロナで頭も疲れているのか、エレーナの質問と僕の回答が噛み合っていなくて、すごく爆笑していた。一日の大半は一人で過ごしていたから、こういう時間は本当に楽しかった。

終わったあと、エレーナが「おやすみ〜!」ってすごく元気に砕けた感じに言ってくれた。僕も真似をして「おおおおおやっすうううみいいいいい!」って言いたかったんだけど、まだ殻を破れていない。本当の自分はエレーナよりもうるさくて、めちゃくちゃめんどくさいのに。

あと1日しかない。なぜか、エレーナとお母さんをとても恋しく感じる。

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● Profile

Kota Ishihara(いしはら こうた)

近畿大学理工学部生命科学科卒業。卒業後、Web制作を独学で学び、2022年よりフリーランスとして活動開始。現在は世界一周をしながら、Webエンジニアとして働きつつ、「旅するように生きる。感動するように働く。心でつながる。」をテーマに、ブログ・YouTube・SNSで発信を続けている。観光地を巡るのではなく、“その国の空気を吸い、その土地で暮らすように滞在すること”を大切にしている。将来の夢は、ヨーロッパに拠点を置き、クリエイティブで多国籍なチームをつくり、国境を越えたプロジェクトを生み出すこと。そして、自ら操縦桿を握るパイロットになること。音楽とファッションは人生のインフラ。イヤホンには非常に辛口。尊敬する人は岡本太郎。

#同じ旅の余韻