シャンパン、白ワイン、赤ワイン、ロゼワイン。
飲みすぎた。顔が真っ赤で、心臓がどくどくしている。まさかの1月1日から熱を出すなんて。
新年の暖炉
年を越した瞬間から、僕は暖炉であたたまっていた。ドミニクとエレーナのお母さんはずっとお話をしている。
エレーナはシャワーを浴びてから下へ来た。いつもシャワーの後につける香水、Les eauxのROUGEGORGE。甘い香りが漂ってきて、ドキッとしてしまうほどいい匂いだった。

僕は置いてきぼりにされていたVigorを抱きしめて、エレーナがシャワーを浴びている間、一緒に待っていた。Vigorの眉が本当にかわいい。エレーナに「買うべきだよ」「あげるよ」って言われたけど、これはエレーナのだし、既にVigorっていう名前がついているから。だけど正直ほしい。とても可愛いもの(笑)。
エレーナはソファーでVigorを抱きしめて寝てしまった。その寝顔は可愛くて、無邪気だった。

新年のあいさつを家族にテレビ電話で伝えた。ばあちゃんと話して、エレーナのお母さんやドミニク、エレーナを見せたら、ドミニクはハイテンションだった。ばあちゃんはなんて言っていいかわからないって。とりあえずセンキューと伝える。
ばあちゃんからの伝言を伝えた。「昂汰がお世話になります。本当にありがとうございます」って。エレーナのお母さんは「ぜひフランスに遊びに来てね。いつでもうちに遊びに来ていいよ」と。僕のばあちゃんとエレーナのお母さんは絶対に気が合う。波長も好みもほぼ同じ。ジャズ、ワイン、霊感。合わないわけがない。

まさかの発熱
夜中、汗をかいて何度も起きた。朝の9時になっても心臓の鼓動が異常に早い。これは絶対に熱がある。
シャワーを浴びて、少しふらつきながら下へ行った。運良く解熱剤を持ってきていたので、イブプロフェンを飲む。ドミニクがお湯を準備してくれた。エレーナのお母さんも心配してくれて、「明日エレーナが病院へ行く予定だから、気分が悪かったら一緒に行っていいよ」って。フランスの初診料は25ユーロらしい。国民はあとから返金されるけど、外国人の僕はされない。それくらいなら行こう。
朝ごはんはバターとバゲット。フランスのバターは最高に美味しい。恒例のコーヒーも飲んで。
エレーナとドミニクはスーパーへ行ったけど、僕は気分が良くなかったのでやめて、外に椅子をひとつ持ち出して、広大な大地を見ながら日記を書いたり、今年の目標を考えたりしていた。こんな素晴らしいところに毎年来れたら、なんていいんだろうって。

エレーナたちが帰ってきてからは室内で日記を書き続けた。エレーナは昨日あまり眠れなかったらしい。お母さんが夜中の3時に電気をつけたから。彼女はVigorを抱きしめて、またソファーで寝てしまった。その寝顔がなんて美しいんだって思って、写真を撮らずにはいられなかった。

初めてのラクレット
年末になると、普通はもっとたくさんの家族で集まるけど、エレーナの家は4人。僕が加わって5人。僕にとって最高の人数だった。多すぎず、少なすぎず。とても落ち着く。

ドミニクたちがラクレットの準備をしてくれている間、エレーナといろんなことをお話していた。一年が経つのは早いねっていう話。僕たちの人生なんて一瞬だよねって。僕はもう23歳になるけど、エレーナはまだ20歳。今年で21歳。「なんて若いんだ!」って言ったら、「こうたもまだ若いじゃん! じゃあ私のお母さんはなんなの?」って。完全に負けた。
エレーナの大学の話も聞いた。2020年のパンデミックが始まった時はまだ高校3年生で、生物のテストをやらなくてすんだから最高だったらしい。大学に入ってからはほぼリモート授業で、友達が一人もいなかった。
2021年の3月に初めて学校へ行き、隣にいたのが友達のマノン。そこからの出会い。7ヶ月も友達がいないまま授業を続けていたなんて、僕だったら必死に悩むところを、彼女は普通にやっていた。改めてすごいなぁって。

ラクレットはテーブルでやる予定だったけど、コンセントを使うとブレーカーが落ちるらしく、キッチンのコンセントにマシンをつなげて、チーズを焼いてはテーブルに持ってくるという往復。ドミニクとエレーナが何度もやってくれた。

初めての本物のラクレット。じゃがいもまるごと1個の上に、とろけたチーズをかけて食べる。最高に美味しかった。ラクレット用のチーズが大好きになった。じゃがいもも2つ食べてしまった。
昨日ワインを飲みすぎたせいで調子が悪くなったんだろうと言われて、今日はワイン禁止になった。悲しいけど仕方ない(笑)。
べナック城
午後、お城へ行くことに。車の中で僕は眠たくてずっと寝てしまった。エレーナに肩を叩かれて起きると、綺麗な町並みが広がっていた。その先に、大きな城があった。

べナック城。中世、1600年くらいのお城。兵士が行き来していた城下町があって、すべてが異世界だった。

日本語の音声ガイドもあったけど断った。ストーリーを聞くよりも、この目で見て吸収するのが好きだから。

エレーナにたくさん写真を撮ってもらった。エレーナは寒がっていたので、僕のマフラーを貸した。プライド・アンド・プレジュディスに出てくるワンシーンのような景色が広がっていた。お食事の間、要塞、寝室。すべてが再現されていて美しかった。

一番上で一緒に写真を撮った。ドミニクが僕たちの写真を隠し撮りしたり。みんなで写真を撮ったり。


エレーナと過ごすのも1週間以上。徐々に慣れてきて、口数が多くなってきている頃だから、すごくたのしかった。剣を触ったり、盾やヘルメットをかぶったりして遊んでいた。僕たちの精神年齢はとても低いので、お互い気が合う。

帰りの車で、エレーナはすごく眠たかったのか、僕の肩に頭を乗せて寝てしまった。僕の肩は凝ってしまったけど(笑)、僕も彼女の温かい頭の上に頭を乗せて、深い眠りについた。
エレーナの強さ
家に到着してから、夜ご飯までの時間、エレーナはお絵かきをしていた。鉛筆で下書きしてからペンでなぞるのが好きらしいけど、今回はペンしかないので苦戦していた。
エレーナの将来について話した。彼女は国際法に興味があるらしい。なにか感じるんだけど、将来は国際機関で働いていそうな気がする。友達や知り合いのほとんどは裕福な家庭で、コネを使ってインターンをしている。だけどエレーナはそれができない。自分の奨学金がなくなってしまうから。
だからこそだと思う。なにもないところから試行錯誤をしながら遠回りをしている。だからこそ、そこに経験が積み重なり、将来きっと他の誰よりもすばらしい人になる。苦労を知っているから。
彼女はとにかく自分に正直に生きていて、自我が強くて、影響力がある。シャイなのにインディペンデント。そのギャップが面白い。

エレーナは王冠のようなケーキのおまけを被って、Vigorを抱きしめてまた寝てしまった。
夜になって熱がさらに上がってきた。シャワーを浴びている時も寒気がした。イブプロフェンを飲んだけど効かない。暖炉でずっと温まって、ときどき汗をかいて。
エレーナはドミニクの顔を描いていた。すごく似ていて、なんと50ユーロの値段をつけた。次は僕の顔を描いてくれるらしく、僕はずっと銅像のように同じ体勢でいた。エレーナは描いている最中ずっと笑っていた。出来上がりは、まあまあいい感じだった。だけど、僕とは言えなかった(笑)。ドミニクが500ユーロの価値をつけてくれたので、驚きだった。







