最後にハグをしたのは2022年1月26日。そして今日は2023年1月28日。2日違いの、ほぼ丸1年ぶり。
しかも場所はまさかのチェコ・プラハ。こんな偶然があるんだなぁって、自分でも驚きが隠せなかった。
石畳を鳴らしながらマーシャの家へ
マーシャと出会ったのは、交換留学生としてロシアのサンクトペテルブルクにいた頃。
同じクラスをとっていて、家に招待してもらってみんなでパーティーをした。あの日、バイバイする時に彼女は言った。「またチェコかロシアか日本で会おう」って。
まさか本当に、チェコで再会するとは思っていなかった。
彼女とニキータは今、プラハの中心街に住んでいる。フランス旅行から昨日帰ってきたばかりだと連絡をもらい、会いに行くことにした。ホテルから歩いて20分。普段から歩く時は音楽を聴いているので、体感ではあっという間だった。
坂道が続く道を歩いていく。上り坂と下り坂が交互にきて、なかなか大変だった。
チェコの道はコンクリートじゃなくて石畳。ニューバランスの靴で歩くと、コンコンって乾いた音が鳴る。その音が気持ちよくて、ずっと歩いていたくなる。
マーシャの家の前で待っていると、彼女がやってきた。本当に久しぶりで、でもこうして会えたことがすごく嬉しかった。お互いにハグをして、家におじゃますることになった。
黄金のエレベーターと豪華すぎる部屋
マーシャの家は、想像を超えていた。
エレベーターは自分で扉を開けるタイプ。ホテルマンがいてもおかしくないくらいの佇まい。1階に降りると、木の窓付きのドアを開けて中に入る。

中に入ると大きなドアがあり、そこからさらにいくつものドアが続いていた。キッチンは大きくて、トイレとお風呂は一緒の部屋。トイレットペーパーのケースが黄金色で、お風呂は大理石と金色。まるでヨーロッパの王宮みたいだった。
リビングには大きすぎるシャンデリアと高い天井、レゴのハリーポッターのお城、クリスマスツリー。ニキータのドラムとギターも置いてあった。ベッドルームも景色も最高すぎて、なんでこんなにすごいんだよって思ってしまうほど。
今まで訪れた家の中で、一番リッチだった。やばすぎてやばい。
いくらなのかなぁって聞いてみると、家賃はなんと17万円。フランスのモンパルナスより高かった。もちろん広さがあるからだろうけど、それにしても驚く価格だった。
2人にはこの広さは十分すぎるよなぁと思いつつ、マーシャとニキータ夫婦は本当に面白いなぁと思った。
キッチンでお茶を飲みながら、この1年何をしていたのか話を聞いた。マーシャは海賊のような船でヨーロッパを4ヶ月旅していたり、フランスのアルプスをハイキングしていたり。それも全部ニキータのお金で、ニキータは家でずっと仕事をしているらしい。
お互いに干渉し合わない、自由な夫婦だなと思った。4ヶ月いなくても気にしないなんて。僕もチェコを選んだ理由や今何をしているのかを聞かれて、答えたりしながら話は尽きなかった。
戦争と、離れて暮らす家族の話
マーシャはサンクトペテルブルクを、戦争が始まってすぐに出たらしい。もう1年くらい帰っていないと言っていた。僕とほとんど同じ状況だった。
テレビで流れる情報と、実際に起きていることの間には大きな温度差がある。マーシャの家族との間にも、その温度差があって、話すたびにどこかトキシックな空気になってしまうのだと教えてくれた。
ニキータはロシアに戻ると招集の連絡が来てしまうかもしれないから、帰らないと決めているそうだ。本当にやばすぎる話だと思った。
そんな話を聞きながら、罪のない人同士が傷つけ合う戦争のことを思うと、やっぱり悲しい気持ちになった。無駄なことだと思う。チェコにいてよかったと素直に思った。
それから僕の方は、ジョージアやラトビア、フランスで見てきたことを話した。エストニアとリトアニアもほぼ同じような雰囲気らしい。
騒がしい酒場でKozelを
準備をして、ビールを飲みに出かけることにした。
近くの酒場は、うるさすぎるくらい賑わっていた。今日はチェコ対どこかの国のサッカーの日で、みんな酔っ払って盛り上がっている。話し声もろくに聞こえないほど。

とりあえずビールを頼んで、ポテトフライを注文する。黒ビールがすごく美味しい。
チェコのKozelと日本のKozelは作り方が違うらしく、味も別物なんだとか。現地のビールが一番おいしいんだろうな、と素直に思った。

チェコは一人当たりのビール消費量が世界一で、年間190リットル。毎日500ミリリットルを飲む計算になる。しかも1本500ミリリットルで90円くらいと、水より安い。
ここは話すには向いていないねということで、2杯だけ飲んで移動することにした。この時点で、僕はもう少し酔っていた。

クラフトビールと、対等な時間
次に向かったのはクラフトビールの店。フルーティーなビールを頼んでみると、甘くてすごく美味しかった。

ここでも話は尽きなかった。だいぶ酔っていたので細かいことはあまり覚えていないけれど、とにかく楽しかった。2時間くらい話し込んで、お会計はいつも通りニキータがごちそうしてくれた。

ニキータもマーシャも、僕より10歳上。年上だからごちそうしてくれるのかな、とも思うけど、正直よく分からない。
ただ、年上だからと気を使わせるようなことは一切なかった。対等に話をしてくれる。
これがすごく心地いい。気を使わなくていいからこそ、面白い会話が生まれるんだと思う。
日本だと、上下関係や敬語があって、それに従わない人を「失礼」と呼んだりする。ふと、その窮屈さを思い出した。対等だからこそ生まれる面白さがあるはずだと、僕は思う。
また会おうと約束して
帰り際、また「チェコか日本かどこかで会おう」とハグをしてバイバイした。
素敵な時間だった。本当に、本当に。マーシャとニキータに、また会えてよかった。




