IHコンロに触れた瞬間、指先にビリビリと電気が走った。 ジョージア・トビリシ2日目。初めての自炊は、まさかの感電から始まった。
感電パスタと、ゆるすぎる助っ人
朝8時に起きて、まずはスーパーへ。 昨日のスーパーは割高だったので、別のスーパーを開拓することにした。
ヨーグルト8つ、バナナ、チーズ、シローク。それにパスタも。 これで2,000円。物価が上がっている。本当に高い。
家に帰って、せっかくだからパスタを作ろうとIHに触れた。 ジジジッ。すごい電気が走る。 いくら触っても電気が消えない。帯電しているのか? 片方の手を壁にくっつけてみても、まだジジジジジッて鳴っている。痛い。
仕方なく、鍋に水を注いで沸騰させて、直接IHに触らない作戦に切り替えた。

人生初の、何も味のしないパスタ。 パスタにかけるものが何もないので、置いてあった塩コショウだけで味付けした。美味しいとは言えない。でも、食べられた。

ジョージア文字のパンとVIOLAのチーズ。

さらに問題は続く。水道管からも水がポタポタ漏れていて、床が水浸し。 オーナーに連絡したら、助っ人のおばさんが30分で来てくれた。対応が早い。
そのおばさんは、がんばって英語で話してくれた。 水漏れのこと、IHの電磁波のこと。いろいろ説明しようとしていたら、途中で僕がロシア語を話した。
「ああ君!ロシア語話せるんだ!」
その瞬間から、会話が一気に弾んだ。 久しぶりの対面でのロシア語。40歳くらいのおばさんとでも、ロシア語でやりとりするだけで本当に楽しかった。なんとも言えない嬉しさがあった。
ジョージアを選んでよかったと心から思った。ロシア語が通じる。それだけで、生活がぐっと楽になる。
おばさんはワイパーで床の水を拭いてくれて、「エンジニアを午後に呼ぶけどいい?」とロシア語で聞いてきた。12時からミーティングがあるので、13時過ぎでお願いしますと伝えた。
そういえば、テレビの使い方も聞いたんだけど、オーナーの助っ人でさえ「いや、わたしそれ知らない」って。
日本だったら水道管が漏れていたら「すみません」から始まるだろう。 でも、おばさんはちょっとめんどくさそうにしてるし、テレビも結局使えないまま。 このゆるゆるが、最高。大好きだ。
ミーティングの後、おばさんがエンジニアさんを連れて戻ってきた。二人はジョージア語で話しているから、何を言っているのかさっぱりわからない。でも、無事に水道管は修理完了。
おばさんがロシア語で「直ったよ〜」と教えてくれた。その後もいろいろ説明してくれたけど、久しぶりのロシア語で全部は理解できなかった。だけど、楽しかった。
「トラブルがあったらWhatsAppで連絡して」と言われて連絡先を交換した。 ホーム画像、めっちゃ盛ってるやん。
丘の上のカフェを目指して
4時半。少しコーディングの仕事を終えて、外に出た。 昨日、ロシア人のコンスタンチンから教えてもらったおすすめのレストランへ向かう。 恥ずかしさとか、そういうのは無し。レストランに入る。それだけを考えた。

雨上がりのトビリシ。
朝は雨が降っていたけど、もう上がっている。強い日差しが街を照らしていた。 音楽を聞きながら、ひたすら歩く。

町を歩いていると、若い子もいるし、年配の人もいる。いたって普通の町。だけど、中東やイランの人もいれば、ロシア人やジョージア人もいる。本当にいろんな人がいる。

コンスタンチンにおすすめされた1軒目のレストラン、Mapshalia。 行ってみると満員。まだ3時なのに、人がたくさん。じゃあ何時なら空いてるんだ。
仕方なく、もう一つおすすめされたKhinkali Houseへ向かうことにした。ヒンカリが食べられる。それだけでテンションが上がる。
クラ川にかかる橋。ビルが2つしか見えない。
橋を渡ってどんどん歩く。途中、橋の真ん中で写真撮影をしている観光客もいた。
一人だと心細い。でも、同時に楽しい。 友達と歩いていると、お話に夢中で気づかない景色がある。一人だと、その分頭の中が広くなって、吸収できるものがたくさんある。自分は地球を歩いているんだって、よりいっそう感じられる。


信号のない横断歩道を、車が走っている中で強気に渡る。日本でやったら完全にアウトだけど、ジョージアではこれが普通。もう慣れた。
汗をかくほど坂を上り、公園に差し掛かったところで休憩。 ベンチに座って料理を調べていたら、一人の40歳くらいの男性がジョージア語で話しかけてきた。
僕がロシア語で「わからない」と答えると、「ああ、君はロシア語話せるんだね」と。
2日間何も食べていなくて、明日アゼルバイジャンに帰るんだけど、シャワルマでもいいからごちそうしてくれないか、と言われた。
危険そうには見えなかった。服装も綺麗ではなくて、本当に困っている人なんだと思った。助けたかった。だけど、その勇気がなかった。
もし一緒にどこかに行って、何かあったらどうしよう。そんな警戒心が働いてしまった。 申し訳ないけどごめんね、と断った。
断ったとき、おじちゃんは「ああそうか。わかった。大丈夫だよ」と言って去っていった。 だけど、その目は僕のiPhoneに向いていた。「その携帯を持っていて5ラリもないのか」という視線。
ごめん。お金がないわけじゃない。でも、まだその準備ができていない。 ジョージアに来て2日目。まだ慣れていない自分がいる。
情けない。自分はまだ小さいなと、身にしみた。 同じ人間なんだから、助けるべきだよなとも思う。本当にごめんね、おじちゃん。


コーカサスの山々と、その麓に広がるトビリシ。
丘の上に着いた。そこからの眺めは最高だった。 山と山の麓にできた街。コーカサス地方の美しさを、全身で浴びた。
それからKhinkali Houseを探し続けたけど、ようやく見つけた店は誰もいなくて怪しい。調べてみると、Khinkali Houseという名前の店が5つもある。コンスタンチンにどの店か聞く必要があった。
近くの地下鉄駅の広場で、楽器を演奏している人がいた。しばらく聞いて、座って人間観察した。ジョージアの人はどんな感じなんだろうって。
サプラヴィとハチャプリ、そして「やった」
ピノキオというハチャプリの店に行こうとしたら、閉まっていた。 結局、さっき見つけたお洒落なカフェに入ることにした。ドアがめちゃくちゃ重い。店員さんと英語で流暢に会話できた。外のテラス席に案内してもらう。

全部ジョージア語。
ジョージアといえば、のサプラヴィワインと、小さいサイズのヒンカリを注文した。合計で1,200円くらい。ちょっと高いけど、最高の時間だった。

テラス席。トビリシの街並みを見下ろしながら。

やった。
自分の力で、ここジョージアに来ることができた。こうやって景色を見ながら食事ができている。本当に大切な瞬間。
店員のお兄さんがワインを注いでくれるとき、「これはジョージアのワインだよね?」って聞いたりした。人に飢えているのか、勝手にオープンマインドになってコミュニケーションがとれるようになっている。
人間って、つながりがないと孤独を感じる。その孤独を防ぐために、一生懸命つながりを作ろうとする。まさに今、それが自分に現れているんだと思った。
パーマで茶髪のお兄さんがハチャプリを持ってきてくれた時、「これもジョージアの料理だけど知ってる?」と。「そう!ハチャプリ!」って答えたら、「正解!楽しんで!」と返してくれた。
嬉しかった。僕も笑顔になっていた。
サプラヴィワインはとても美味しい。ただ、深い紫色をしていて、飲んだら唇まで紫になってしまった。自撮りするのにちょっと苦労した。

唇、紫。
そろそろ寒くなってきた。外も暗くなっている。 お会計を済ませて、丘を下る。
音楽を聞きながら歩く夜道は最高に楽しかった。 車がたくさんあり、僕と同じ日本人は誰一人いない。最高。 中東やジョージア、ロシアの人ばかりの中で、アジア人は目立つ。変な目で見られることもある。でも、そりゃそうだ。

クラ川に映る夜のトビリシ。
家の近くまで来て、寄り道することにした。 屋台のような飲食店が並ぶ通りを見つけた。ペルシャレストランやトルコのレストラン、ありとあらゆる料理店がある。外国人もそこで食事をしていた。

ハチャプリのマグネット。かわいい。
お土産屋にはジョージアのTシャツやマグネットがあった。最後に買っていきたい。
暗い道を抜けて、最後にスーパーへ。ジョージアのワインとワインオープナー、50円のマスカットを買った。50円。安い。
家に帰ってフルーツを食べた。普通に美味しかった。
今日、達成できたことがある。
「一人でレストランに入る」こと。
ロシアにいた時でさえ、一人でレストランに入るのには抵抗があった。勇気がいることだった。 でも今日、ひとりでカフェに入って、料理を注文して、テラス席で食事をした。 これだけでも、本当に大きい成長だと思う。やった、って。
さらに、一人でジョージアに来ることができた。 2019年からずっと思っていたこと。いつかジョージアでノマドをしたい。 今、それができている。
毎日、新しく自分に挑戦を課して、自分に自信を持てるように。 丘の上で飲んだサプラヴィの余韻が、まだ唇に残っている。



