昼の12時。寝ぼけたまま目を開けると、知らない女性が部屋に入ってきて、日本語で話しかけてきた。
彼女の日本語は完璧すぎて、一瞬、頭がバグった。寝起きにこんな遠い国で日本語を聞くとは思っていなかった。

二重予約とモチベーショナルな朝ごはん
話を聞くと、僕がうっかり延泊申請をせずに新しい予約を入れてしまっていたらしく、彼女はホステルの予約をキャンセルしてほしいとのことだった。英語と日本語を混ぜながら、支払いはもう済んでいることを伝える。彼女はそのまま外へ出ていった。
シャワーを浴びて、朝ごはんを食べに行く。12時近かったから、もう片付いているだろうなと思っていたら、ちゃんと僕の名前のプレートが置いてあった。

驚いたのは、プレートの裏。日本語で、すごくモチベーショナルなメッセージが書かれていた。文章もすごく良くて、土日だけ働いている、さっき話しかけてきてくれた彼女だろうと思った。
HelloTalkとTelegramの返信を済ませて、部屋に戻る。今日はノープラン、すごく疲れていたから特に予定は入れない。夜にBBQがあるらしいので、それまでは書きそびれていたトルコの日記を書いて過ごした。
エリナとの出会い
さっきのお姉さんが近くに来たので、BBQは何時から始まるか聞いてみた。「日本語でいいよ」と返ってきて、そこからいろんな話をした。
彼女の名前はエリナ。大学3年生で、日本語を勉強している。1年生と2年生のときに3か月間日本に滞在して、ホテルのレストランでインターンをしていたらしい。日本愛がすごくて、ドン・キホーテの曲、ダイソーの歌、ラッスンゴレライまで歌ってくれた(笑)。
僕はなぜか、少し恥ずかしくなってしまった。日本のことにそこまで興味を持てない自分がいて、それに対する申し訳なさのようなものを感じたのかもしれない。
一緒にご飯を食べた。僕は寿司、エリナはパスタと卵。来年大学を卒業したら日本の大学院で勉強したいらしく、横浜や江の島の名前を挙げて「ロマンチックな街だよね〜」と話していた。将来は外交官か特使になりたいという。彼女の努力とコミュニケーション能力、ユーモアのセンスは、きっと日本にふさわしいと思った。
遠いキルギスで聞いたハウルの動く城
楽器の話になり、歌とピアノが趣味だというエリナと、一緒にピアノを弾こうという流れになった。ホールに移動すると、別の受付で働いている男の子がすでにピアノを弾いていて、「え、君も弾けるんかい!」と驚いた。
聞くと、ピアノを自分で学びはじめてまだ4日目。それでもう少し弾けるようになっていて、見せてくれた。4日でここまでImproveしていたので、素直にすごいと思った。
彼はフランスの音楽が好きらしく、僕はエディット・ピアフやラ・ボエームを弾いた。彼はジャズも好きで、最初に学んだのはデイヴ・ブルーベック・カルテットの曲だという。そして彼はジブリの「ハウルの動く城」が好きだと言うので弾いてみせると、すごく驚いていた。「この曲を弾けるようになりたい。弾くとすごくリラックスする」と。
こんな遠いキルギスの国の人が、日本のこの曲を好きになってくれている。それが本当に嬉しくて、自分が日本に生まれたことを、素直に幸せだと思えた。
アイス片手に、日本の変な話
エリナと男の子はすごく楽しそうに話していて、僕はエリナに誘われて外の小さなショップへアイスを買いに行くことにした。

スイカバーのようなものと、日本のアイスの実のようなものを買って、一緒に外で食べた。エリナは日本の好きなことや、面白い動画を見せてくれた。
なんか変なアニメの動画だったりで爆笑だった。

チャーハンの材料を買いに
ホステルに戻ると、雨が降っていてBBQは中止。代わりに日本の料理を作ろうという話になった。オムライスとチャーハンが案に挙がって、最終的にチャーハンに決定。
驚いたのは、そこにいるメンバーの中でJLPT N5が2人、N3が1人もいたこと。みんな日本が大好きな人ばかりだった。材料を提案して、RomaとAcelと3人でショッピングに出かけた。無事に材料を買うことができた。卵、ネギ、にんにく、醤油、チキン、コーラ。

歩いている間、Acelはおすすめのカフェを教えてくれたり、好きなジブリ映画の話をしてくれた。「千と千尋の神隠し」と「ハウル」が好きらしい。
Daniel、アイスクリームを手に現れる
ホステルに到着したけど、すごく疲れていたのでちょっと休むことに。エリナが呼びに来て、チャーハンを作ろうという話になった。だけどそうしているうちに、みんな3階に集まって話し込んでいて、「今日は疲れたから明日にしよう」ということになった。
結局、自分のベッドで少し休んでからうろうろしていると、エリナが仕事の合間を縫って一緒に外に出て話をしてくれた。月曜日に、彼女の大学を案内してもらい、そこから昼ごはんは日本食レストランで食べて、それから日本語センターに行こうというお話になった。
そんな話を楽しそうにしていると、Danielがやってきた。アイスを買ってきてくれたのだ。彼は、前日に一緒におにぎりを作った仲間。Nice to meet youとは言っていて顔見知りではあったけど、あまり話はしていなかった。僕とエリナの分と自分の分のアイスクリームに、コーラとカップまで持ってきてくれた。なんてすごいんだろうと思った。すごくフレンドリーで、オープンだなぁって。そんな彼はいつも笑顔で、本当に無邪気だった。

ロシア語で交わした、彼の人生
RCコーラを開けて、僕たちに注いでくれた。僕はミルクのアイスクリームを、彼はスイカ、エリナはメロンのアイスクリームを食べた。今日で2本目(笑)。アイスを食べながら、ロシア語でいろんな話をした。
エリナが仕事に戻ると、僕は彼との会話をフィルミングしながら、ロシア語で話し込んだ。高校卒業後にモスクワで2年働き、それからクラスノヤルスクで働いて、キルギスに戻って今は大学生をしているという。韓国のInstituteで韓国語とツーリズムを学んでいて、これから日本語のクラスもあるらしく、それがすごく楽しみだとか。彼は「Beautiful Days」という映画が好きで、いつも「今度は今度、今は今」という俳優のセリフをずっと言っている(笑)。今はこのホステルに住んでいて、実家は田舎の街らしい。そんなことをたくさん話した。
いつのまにか、誰とでもある程度ロシア語で会話ができるようになっていた自分に気づいた。文法はぐちゃぐちゃだし、全然自由に話せるわけではない。それでも、人と人とのコミュニケーションは普通にできているので、それは自分のことを誇りに思う。
最後に彼とインスタグラムを交換して、友達になった。彼はその後ホステルに戻っていった。すごくフレンドリーで、本当に楽しかった。彼は、僕が初めてしっかり話をした日本人らしく、すごく感動していた。それを聞いて、僕も感動した。すごく嬉しかった。
家族みたいなホステル
それからは、TENGAの話に戻ったり、キルギス人は保守的なのかオープンなのか、なんて話でも盛り上がった。
ホステルに戻ってからは、映画を見ようという話になって、リーザとAcelと一緒に見ることに。そこにエリナも加わった。だけど、映画は流れているだけで、僕はほとんどエリナとマットに寝転んで話していた。「変態」とか「スケベ」とか、そういう日本語を知っているので、エリナは「変態だね」と言いながら爆笑していた。すごくフレンドリーだなぁって思った。
キルギス人はもっと保守的なのかなって思っていたんだけど、実際はみんなオープンで距離がすごく近くて、フレンドリーな人が多かった。ボディータッチも、軽く叩いてくるのも普通で、本当に簡単に友達を作ることができる。今日のエリナのように、1時間話しただけで友達になれた。
こんなに友達になるのが簡単だからこそ、人間らしく生きることができる。このホステルにいると、自分はすごく自分らしく、平和になっていることを感じる。今まで生きてきた中で、こんなにスローで、同じコミュニティーで、毎日同じメンバーがいて、まるで家族のような場所はなかった。リセプションの人も、他のメンバーと全く同じように接してくれる。みんな友達。
同じメンバーが固定でいること、リセプションの人が若くてオープンなこと、相対的なストレスが少ないこと。この条件が揃って初めて成立する空気だと思う。キルギスは、特に人工物が少ないからこそ、人間らしく生きることができる環境なんじゃないか。やっぱり、環境は大切。どこに自分を置くのか。これこそが、人生を作る上で一番大切なことだと思った。
夜は日記を書きながら、エリナと一緒に大学の課題の話や、彼女の好きな変な日本語の音楽の話をした。月曜日にどんな料理を食べたいかという話もした。こんなに純粋な話ができるって、なんだか心が温まる。




