〜心のままに歩く旅〜
キルギス・サリチェレクの山頂へ、人生初の本格登山

キルギス・サリチェレクの山頂へ、人生初の本格登山

出会い, 面白い体験, ストーリー
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キルギス・サリチェレクで挑んだ人生初の本格登山、頂上の先の岩峰へたった一人で登り切った達成の一日

7時に目が覚めた。 今日はついに、サリチェレク(Sary-Chelek)へのハイキングの日だ。 人生で初めて、しっかりとした標高のある山に登る。

すごく興奮していた。メンバーとはもうすっかり打ち解けていて、ほぼ全員と仲良くなれていた。ただ一緒に旅をするだけでなく、Seriousな山登りのような過酷な何かを一緒に乗り越えるとき、人との絆は一気に深まる気がする。お互いに仲良くなる上で、本当に良い機会だと思った。

朝食ビュッフェと、卵ひとつの攻防

シャワー室は2つしかなかったので、いち早く起きて確保した。それから朝ごはんへ。

揚げパン、ソーセージ、サラミ。バイキング形式で並んでいたけれど、加工食品ばかりで体に良さそうなものはほとんどなかった。とりあえず全部少しずつ取って、席についた。

卵は人数分しかないことに気づいて、最初は1つだけ取った。小学生の給食で「平等」を叩き込まれたせいだと思う。でも隣のポーランド人の友達は3個取っていた。彼の頭には「1人ひとつ」という発想はなくて、来た者順らしい。でも、本来はそっちの方が自然なんじゃないかとも思う。

改めて考えると、タンパク質は大事だ。僕も彼のマネをして3個食べることにした。結局、卵は余っていた。みんなが卵を食べるわけじゃない。それも、ひとつの発見だった。

標高2300mへ、登山開始

荷物を持って準備完了。マダニがいると聞いたので、靴下にウインドブレーカーの裾を入れ込んで服装も整えた。いざ出発、という気持ちでワゴンに乗り込み、登山開始地点へ向かう。

ワクワクと不安が入り混じって、混ざり合ったまま体の中を駆け巡る。それでもこの瞬間、確かに「生きている」と感じた。みんなが同じ方向を向いて進んでいくときの高揚感は、何にも代えがたい。

チェックポイントに着くと、バンからみんな降りた。そこ自体は標高が高くなかったけれど、今日登る場所はうんと高い。高山病にならないか、初めての登山だからこそ、いろいろと心配だった。

みんなで円になって、ガイドの子が準備体操を教えてくれた。一丸となって同じ方向に進むときの快感は、本当にやばいものだった。僕はこういう瞬間が大好きだ。準備体操を終えて「いざいくぞ」と、テンションが上がっていく。

歩き出す前から、なぜか息苦しさとめまいを感じ始めた。不安からくる過呼吸なのか、標高のせいなのか判断がつかない。同時に、少しクラクラしてくる感じもした。だけど、こんなところで高山病だ不安だと弱気になってどうするんだ、と自分に言い聞かせた。

ガイドの子が「できるだけ体力を温存して、あまり話さないように」と言っていたので、高山病の症状が出る人もいるらしいと知る。それが自分ではないことを祈った。以前登ったイジェン山では先頭を歩いて全く疲れなかったから、きっと山には向いていると思う。

川の水を飲み、湖を見ながら歩く

そんなこんなで、歩き始めた。山に向かって突き進む。最初は話していたメンバーも、途中からは無言になった。ひたすら自然に向き合いながら進む。

チェックポイントに着くころには、先頭と最後尾の差がかなり開いていた。もちろん僕は先頭だった。景色はどんどん綺麗になっていき、だんだんと湖が見えてくる。高い場所にいることを、少しずつ実感し始めた。歩いているときは瞑想をしているような感覚で、山と自分だけの時間になる。

標高はすでに2300m。湖が2つか3つ見えるところまで来た。川が流れていて、合流したガイドの子が「この水、本当に美味しいよ」と言う。バクテリアがいるんじゃないかと少し怖かったけれど、彼女が先に飲んで見せてくれたので、思い切って続いた。「キルギス人はみんな飲んでいるから」というのも後押しになった。同じ人間でも耐性は違うから、お腹を壊さないか多少の不安はあったけれど、何も問題はなく、水は普通に美味しかった。

唯一心配だったのは、遭難しないかということ。だけど幸い、ルートが分かれることもなく、前か後ろかだけだったので大丈夫だった。僕より先を行くのは、ツアーガイドやキルギスのローカルの人たち。慣れているのか、僕より自然な足取りで歩いていく。それも本当にすごいと思う。

ひたすら歩く。2時間、3時間。仲間がそばにいるときも楽しいけれど、一人で登っているときもすごく楽しい。今この瞬間に集中できて、前や後ろにメンバーがいるとわかっているだけで、心は安心する。仲間と離れていても、同じ方向に向かって歩いているとわかれば、それで十分だった。

湖を見下ろしながら、頂上への道

ひたすら登る。どんどん景色が綺麗になっていく。坂だからこそ疲れて、途中で休憩を挟む。だけどリュックの中の2Lのペットボトルは、いつのまにか500mlになっていた。荷物が軽くなるぶん、身軽になってどんどん前進できるようになっていく。

自撮りをしたり、動画を撮ったりしながら、いくつものチェックポイントを越えていく。

頂上、7つの湖が一度に見えた瞬間

そしてついに、頂上に到着した。

そこから見る景色、それこそがサリチェレクだった。サリチェレクとは「黄色の花の蓋」という意味らしい。実際、あたり一面に黄色い花が咲いていて、そこから見える景色は本当に美しかった。湖が7つほど同時に見えて、360度、自然しかない。

すごく癒された。高山病の心配はもう、すっかり忘れていた。それよりも、達成感の方がずっと大きかった。

槍のような岩峰へ、一人で

みんなでお昼を食べようとしたそのとき、僕らより先にゴールしたグループが、さらに奥へ向かっているのが見えた。槍ヶ岳のような、鋭い岩の頂だった。そのトップで写真を撮っている姿を見て、ここまで来て行かないのはおかしいと思った。

お昼を後回しにして、一人でそちらへ向かった。道は舗装されていない。石だらけで、一歩踏み外せば落ちてしまう場所もあった。

怖い。怖い。だけど、行きたい。そう思いながら、強く強く前へ進んだ。

一番急な坂をなんとか登りきって、ついに到着した。ツアーガイドを含む5人が、そこで写真を撮っていた。音楽を流しながら踊っている人もいて、すごく楽しそうだったので僕も混ざった。同じメンバーが、僕の写真や動画も撮ってくれた。

ガイドの子は慣れているのか、クラブみたいに足を上げて踊っていた。あの度胸は、僕にはとても真似できない。景色は壮大だった。サリチェレクを一望できて、他のどの山よりも自分が上にいる。足をぐらぐらさせながら、写真を撮った。

頂上ランチと、まさかの2位で下山

来た道を戻ってランチを食べた。山の頂上で食べるランチは最高だった。本当に美味しかった。

20分ほど過ごして下山開始。キルギス人のローカルの子やガイドの子は、走るように下山していく。プロだなと思った。ローカルの子から、名前もわからない杖のようなものを借りて下山したけれど、最初は良くても途中から邪魔になった。荷物は少ない方がいい。山登りに限らず、それを改めて実感した。

ポーランド人の友達と再会したり、馬に乗って下りようかと話したりしたけれど、現実的に考えて危なそうだったので、結局は歩いて下山することに。ガイドの子に負けじと走った結果、途中から完全に一人になった。前にも後ろにも誰もいない。この道であっているのか、少し不安になったけれど、ひたすら記憶を頼りに進んだ。途中、道が分かれている場所もあって「あれ、どっちだっけ」と一瞬迷いながらも、とにかく思い出しながら歩いた。

チェックポイントに着くと、ガイドの子が休んでいた。2位だった。自分でも驚くくらい早く下山できたみたいだ。そこからは、ガイドの子とゆっくり休憩しながら、寝転んで空を見て話した。20分後、他のメンバーも合流した。

湖畔を歩き、標高の高い湖へ

山登りだけでは終わらなかった。そこからは、湖の周りを歩いて別のチェックポイントへ向かうことになった。まじか、と思いながらも、ひたすら歩いていく。

途中、2人の仲間と合流した。ワイルドな雰囲気のローカルのキルギス人たちもいて、池はすごく綺麗だったけれど、それよりも「ミッションを進んでいる」という感覚の方が強かった。冒険心が掻き立てられる。

歩くこと2時間、ようやくゴールが見えた。途中ではロシア人の仲間とも合流して、ロシア語で少し話しながら歩いた。

バンが待つゴール地点に到着したときは、達成感がすごかった。本当に嬉しかったし、無事にやりきった。ポーランド人の子は30分ほど遅れて到着した。下山の途中で迷子になって、別の場所に出てしまったらしい。それでもとにかく歩き続けて、なんとかここまでたどり着いたという。遭難したときの不安を思うと、彼はすごく勇敢だと思った。

標高の高い湖に、服を脱いでドボン

先にゴールしていたローカルのキルギス人は、すでに湖で泳いできて寒そうにしていた。せっかくのチャンスだし、経験だと思って、僕も泳ぐことにした。仲間を誘って、一緒に湖へ向かう。すでに泳いでいる人たちもいて、みんなすごく楽しそうだった。

どれくらい冷たいのか気になって触ってみると、氷のような温度だった。標高が高いから当然だけれど、今まで泳いだ中で一番冷たい場所だと思う。泳ぐこと自体、本当は禁止らしいけれど、ローカルの人たちは全く気にしていなかった。ここから見る景色も最高だった。まさに、絶景という場所だった。

服を脱いで、ドボンと飛び込んだ。体が硬直しそうになって、思わずキャーと叫んだ。滞在時間40秒。それくらい冷たかった。だけどその瞬間、確かに生きている感じがした。すごく気持ちよかった。

違法だったボートで、湖を1周

そうやって楽しんでいると、ボートに乗ったおじさんが近づいてきて、仲間と何やら話し始めた。どうやら、ボートで湖を冒険できるらしい。急いで着替えて、キルギス人の仲間2人と一緒に船着き場へ向かった。

このときはまだ、それが違法だということを知らなかった。おじさんに「動画は撮らないで」と言われながら、仲間がお金を払って3人で乗り込んだ。

ハイスピードで湖を1周する。風がびゅんびゅん吹いて、最高に気持ちよかった。登山で疲れた体が、一気にリフレッシュされていく。自撮りをしたり、おじさんが映らないように気をつけながら動画を撮ったりして、湖を一周した。

まわりは自然に囲まれていて、本当に秘境の地に来たと思った。この湖を、この方法で一周できたのは、僕たち3人だけ。最高の思い出になった。湖の水はどこまでも透き通っていて、手を入れると本当に綺麗な色をしていた。

後でお金を払おうとしたら、仲間は「気にしなくていいよ」と受け取ってくれなかった。申し訳なく思いながら、ありがとうと伝えた。「日本に来ることがあったら連絡してね」と言うと、彼は「日本のビザを取るのは本当に難しいよ」と少し悲観的に返してきた。僕は、なんとも言えなかった。

仲間とDurak、芽生えた経営への想い

バンに乗ってホステルに戻り、みんなで夜ごはんを食べた。とてもいい時間だった。すごい達成感があったし、心の中で「みんなやりきったね」と思いながら、まるで心が通じ合っているような気持ちだった。

夜ごはんのあとは、数人でDurakをプレイした。ポーランド人の友達に教えてもらった、旧ソ連圏では誰もが知っているトランプゲームらしい。

テーブルにはみんなのビールが並んでいて、キルギス人のローカルの子に勧められて僕も少しだけ飲んだ。酔って危ないことになったら困るので、そこで切り上げて、あとはそのままにしておいた。

今日は最高の日だった。サリチェレクの頂上に、仲間と一緒に立てたんだ。この達成感、この快感が好きだ。もっとたくさんの挑戦をして、体力的な挑戦でも精神的な挑戦でも構わない。生きている実感を感じながら、たくさん冒険して、難しいと思われることでも前に突き進んでいきたい。

仲間と一緒であれば、きつくない。むしろ楽しい。それは経営でも、きっと同じことが言えるんだと思う。自分で会社を起こして、仲間と共に同じ方向へ進んでいきたい。そんな想いが、また一つ芽生えた日だった。

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● Profile

Kota Ishihara(いしはら こうた)

近畿大学理工学部生命科学科卒業。卒業後、Web制作を独学で学び、2022年よりフリーランスとして活動開始。現在は世界一周をしながら、Webエンジニアとして働きつつ、「旅するように生きる。感動するように働く。心でつながる。」をテーマに、ブログ・YouTube・SNSで発信を続けている。観光地を巡るのではなく、“その国の空気を吸い、その土地で暮らすように滞在すること”を大切にしている。将来の夢は、ヨーロッパに拠点を置き、クリエイティブで多国籍なチームをつくり、国境を越えたプロジェクトを生み出すこと。そして、自ら操縦桿を握るパイロットになること。音楽とファッションは人生のインフラ。イヤホンには非常に辛口。尊敬する人は岡本太郎。

#同じ旅の余韻