〜心のままに歩く旅〜
怖くて、強くなる。深夜便でキルギスに到着

怖くて、強くなる。深夜便でキルギスに到着

面白い体験, ストーリー
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深夜便でビシュケクに到着した初日、SIMカードの失敗と小さなロシア語のやりとりを重ねながら、怖さの中で少しずつ強くなっていく話

「シートベルトを締めてください」 そのアナウンスで目を覚ますと、アイマスクの下でみんなもう起きていた。 眠っていたのは、僕だけだったらしい。

深夜便、ビシュケクへ

深夜フライトで4時間、キルギスの首都ビシュケク(Bishkek)へ。 最後列の40F、隣には誰もいなかったから、思い切り横になって3時間ほど眠れた。

夢の中では、紙で猫の扇子を作っていた。手順通りに、まるでダンジョン攻略みたいに。

そこに割り込んできたのが、着陸態勢のアナウンス。 キャビンクルーに急かされて、慌ててシートベルトを締めた。

窓の外はもう快晴だった。山々が連なり、見たことのない景色が広がっている。 夢にまで見たキルギスに、本当に来たんだ。心がじわっと浮き立った。

機内はほとんどがローカルの乗客。外国人らしき姿は、少し前の座席に3人だけだった。 イギリス人なのかフランス人なのか。3人並んで、揃って窓の外を見ている。 いちばんおとなしそうな子が通路側、いちばん喋りそうな子が窓側。妙に納得した。

SIMカード、まさかの落とし穴

無事にビシュケクへ到着。パスポートコントロールはあっさり通過できた。 その勢いのまま、空港でSIMカードを買うことにした。

カード払いはNG。仕方なくUSDで支払う。 18ドルで4週間使い放題ならいいかと即決したのに、お釣りの82ドル分が返ってきたのはキルギスソムだった。最悪だ、と思った。

「お釣りもUSDでもらえますか」って、先に聞いておくべきだった。 これもまた新しい失敗で、新しい学び。ロシア語でのやり取りは、あと一歩ってところまでできていた。

空港の外に出ると、SIMカードを売る店がいくつも並んでいた。 ああ、ここで買えばよかった。カード払いができる店を選ぶべきだった。

疲れ切っていたから、並んでいない店にふらっと吸い寄せられた。 みんなが買っていたから、自分もそこでいいかと流された。 完全に、感情(システム1)で動いた結果。もっと論理的に考えなきゃな、と思う。

ヤンデックスタクシーで街の中心へ

市街地へは、事前に調べておいたヤンデックスタクシー(Yandex Taxi)を使う。 「タクシー、タクシー」と声をかけてくる呼び込みには、目もくれなかった。

アプリで呼ぶとすぐに到着。23kmで1400円ほど、悪くない値段だと思う。 渋滞に巻き込まれて時間はかかったけど、ホテルの場所をあらかじめピンしておいたおかげでスムーズだった。

必要なアプリを事前にダウンロードしておくこと。 入国から市街地まで、慣れれば2時間くらいで一通り終わるはず。だからこそ、特に入国直後は準備がそのまま安心につながるんだと改めて思う。

早すぎるチェックインで爆睡

ホステルに着いて、アーリーチェックインをお願いした。 料金は50%増し。それでも追加はたった1000円だったから、今は眠りたい気持ちが勝った。

受付の子はとても親切で、日本にすごく興味を持ってくれた。 おすすめのツアーや旅の計画まで教えてくれて、最後にはInstagramを交換した。 頭がぼんやりしていたせいか、いつもなら緊張するはずのその一言が、すんなり口から出た。

部屋もシャワーも清潔で、もうお気に入りのホステルになった。 案内された部屋は選んだタイプと違う気もしたけど、人と出会えるならそれでいい。

3時間だけ寝るつもりが、気づけば15時。しっかり爆睡していた。

公園を歩き、街に慣れていく

起きてシャワーを浴びると、猛烈にお腹が空いていた。 寿司の気分だったのに、結局選んだのはケンタッキー。1280円、けっこう高い。

新しい街に着いたら、まず歩く。それが自分のルール。 昨日買ったカメラにストラップをつけて、DJI(ドローン)も一緒に持って、公園を散歩した。

歩きながら、フィルムシミュレーションをいろいろ試す。 自分がどのスタイルを好きなのか、まだわからない。その雰囲気を探す旅でもある。

食べながら、ロシア語でいくつかの美容室にパーマとカットができるか連絡してみた。 ENTJだったらもっと即決できるのに、と思うくらい、今の自分はどこか不安定。 トルコにいたときは自信満々で生き生きしていたのに、キルギスに着いてからは心臓がバクバクしている。

たぶん、環境に適応している最中なんだと思う。 毎日違う人と出会い、毎日違う環境に身を置くのは、正直かなり精神的な負担がある。 だけどそのぶん、簡単には壊れない自分がちょっとずつ作られている気もする。

公園でアイスクリームを一つ注文した。 一口食べて、驚いた。まるで1990年の日本のアイスクリームみたいな、懐かしい味がした。

歩きながら、キルギスの人たちを観察した。 サングラスをしてファッショナブルに歩く人は少なく、まだあまり西欧化されていない印象。オープンな人もいるけど、全体としては保守的な人の方が多い気がする。 アルメニアと比べてしまっている自分がいた。どこか保守的で、でも心はまっすぐで純粋そうに見える。

姿勢がいいわけでもなく、自信がなさそうな男の子も多い。 目が泳いでいる男の子と、隣を歩く綺麗な女の子。デート中らしいふたりの温度差が気になって、つい目で追ってしまう。 フレンドリーというよりシャイな人が多い気がして、受付の人も愛想がないことが多かった。 この違い、面白いな。はっきりしているのかどうかも含めて、そんなことを考えながら映画館へ向かった。

ロシア語で『プラダを着た悪魔』

19時半までにショッピングモールへ着くのが今日の目標。 『プラダを着た悪魔』を英語で観ようと思ったら、上映は1日1回だけで満席。 仕方なく、ロシア語音声・キルギス語字幕で観ることにした。

会話の中身がすべては理解できなくて、正直そこまで楽しめなかった。 思っていたより感情の起伏が少なくて、大人向けの映画という感じがした。

夜のスーパーで交わした一言

映画のあとは、久しぶりのロシアスタイルの寿司でリフレッシュ。

カタコトのロシア語で「まだ空いてますか」と聞くと、店員さんが微笑んでくれた。 僕のロシア語、なんだか可愛く聞こえたんだと思う。 それでも慌てず、落ち着いて振る舞えた自分がいた。これも、成長かもしれない。

寿司を食べて、歩いてホステルへ戻る。 夜道は少し身構えたけど、みんな普通に歩いていて、危ない感じはまったくなかった。

途中のスーパーで水とバナナを買った。 「こんにちは、袋ください」と当たり前のようにロシア語で言うと、店員さんに「韓国人?中国人?」と聞かれた。 「日本人だよ」と答えると、「へえ、そうなんだ」とだけ。 でも「ロシア語上手だね」って言ってもらえて、笑って「ありがとう」と返した。

いつのまにか、ロシア語にすっかり馴染んでいる自分がいた。これも成長。

新しい国に移動するたびに、少し怖くなる。 わからないことだらけで、脳が常にフル回転する。油断しない、騙されない、聞く、動く、警戒する。 それだけで、毎回どっと疲れてしまう。

だけどそれこそが、人を若く保って、成長させる起爆剤なのかもしれない。 言語も、環境も、食べ物も、人も違う場所で、また0から始まる毎日。

これを繰り返しているうちに、僕はきっと、少しずつ強くなっている。

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● Profile

Kota Ishihara(いしはら こうた)

近畿大学理工学部生命科学科卒業。卒業後、Web制作を独学で学び、2022年よりフリーランスとして活動開始。現在は世界一周をしながら、Webエンジニアとして働きつつ、「旅するように生きる。感動するように働く。心でつながる。」をテーマに、ブログ・YouTube・SNSで発信を続けている。観光地を巡るのではなく、“その国の空気を吸い、その土地で暮らすように滞在すること”を大切にしている。将来の夢は、ヨーロッパに拠点を置き、クリエイティブで多国籍なチームをつくり、国境を越えたプロジェクトを生み出すこと。そして、自ら操縦桿を握るパイロットになること。音楽とファッションは人生のインフラ。イヤホンには非常に辛口。尊敬する人は岡本太郎。

#同じ旅の余韻