〜心のままに歩く旅〜
期待して傷つく夜、それでも出会いはやめられない|ベトナム深夜映画デート

期待して傷つく夜、それでも出会いはやめられない|ベトナム深夜映画デート

面白い体験, ストーリー
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風邪気味で体調が悪い中、オンラインで知り合ったTaoと深夜の映画館へ。上映されたのはMission Impossibleではなく、まさかのホラー映画。僕が驚くたびに、彼女は黙ってポップコーンを渡してくれた。シャワーを浴びてメイクをして来てくれたと知って、遅刻に腹を立てていた自分が恥ずかしくなった夜。

夜中の4時に、ようやく眠ることができた。
胃の不快感、喉のいがいが、鼻づまり、少し熱っぽくて、寒い。
典型的な風邪の症状だった。

ここに来て、もうすぐ1ヶ月。
ずっと旅を続けてきた疲れが、静かに溜まっていたのだと思う。
毎日の移動と寝不足が重なると、NK細胞の働きは弱まり、感染しやすくなる。
きっと、免疫が落ちている。
今は、休むべきタイミングなんだと思った。

今日はVun Tauへ行く予定だった。
11時30分に起きて、シャワーを浴び、準備をする。
チェックアウトの時間を少し過ぎそうだな、と思いながらパッキングしていると、ドアをノックする音。
「チェックアウトの時間だよ」とおばさん。
少し厳しいな、と思う。
部屋を暗くして寝ていたから、まだ眠っていると思われていたのかもしれない。

歩いて乗船場へ向かう。
1kmほどの距離だけど、日差しは強く、汗が止まらなかった。
でもポカリスエットがあったから、熱中症の心配はなかった。

乗船場に近づくと、バイクのおじさんが声をかけてくる。
今日はVun Tauのチケットは売り切れだという。
代わりにバイクで連れていくとか、VIPチケットがあるとか。
一瞬でビジネスモデルは理解できた。
そんなものに捕まるか、と思いながら正式な窓口へ行くと、やはりチケットは完売。
明日の12時のチケットを購入した。

そのおじさんは、なぜかそこまでついてきて、受付の人にまで話しかけていた。
相当しつこい。
日本人だと分かると、今度はツアーの話。
「ここで働いている」と嘘をつくと、ようやく去っていった。
面倒だけど、これもベトナムらしい。

近くのベンチに座り、明日から泊まる予定のホテルに連絡をし、今日泊まるホテルを予約した。

せっかく予定が空いたので、オンラインで知り合った友だちに「今日空いてるよ」と連絡すると、映画に行こうという話になった。
久しぶりの、ベトナム人の新しい友だち。
INFPの彼女は、とても細かいところに気づく人で、話していて楽しい。
きっと楽しい夜になる。
……そう思いたいけど、半分は期待したくない。

ホテルにチェックインして、少し仮眠をとる。
ゴロゴロしながら体を休める。

人生は一度きり。
やったもん勝ちで、「これをしなくて後悔しないか」を考えること。
それが、とても大切だ。

彼女は19時に仕事が終わるけど、今日は礼拝があるらしく、会うのは22時。
22時30分からMission Impossibleを見る予定で、終わるのは1時15分。
こんな時間の映画は、人生で初めてだ。
それだけで、少しワクワクする。

雨が降る中、カッパを着て歩く。
映画館までは1.4km。歩ける距離だ。
22時に着いて「ここにいるよ」と連絡すると、「30分後に着くね」と返ってきた。
正直、少しショックで、腹が立った。

でもこれは、期待しすぎた証拠だ。
期待しない方が楽だと言われるけど、僕はどうしても期待してしまう。
それを押さえつけても、いいことはない。
だから、押さえつけたくもない。

他者に期待しないことは大切だけど、期待してしまう自分もいる。
思い通りにならないと、傷つく。
複雑だな、と思う。
ここはベトナムだし、時間通りに来ないのは普通なのかもしれない。
でも人それぞれだとも思う。
少し腹が立っている自分に気づきながら、今日は楽しまなきゃな、と言い聞かせた。

しばらくして、Taoが現れた。
想像していた彼女より、ずっと大人しかった。

「こうたは1時間くらい待ったよね…?ごめんね」

とTao。

「ぜんぜん大丈夫だよ。英語とフランス語の勉強をしていたから」と僕。

「遅れてごめんね」と言いながら、チケットとポップコーンを受け取る。
チケットはすでに買ってくれていて、「私が払うからいいよ」と言われた。
特大サイズのコーラとキャラメル味のポップコーン。

映画は23時からだった。
問題なかったんだ、と少し安心する。

彼女はD6に住んでいて、往復40分。
シャワーを浴びて、着替えて、メイクをして来てくれたらしい。
だから、D1から往復で40分かかって、なおかつシャワーを浴びて、服を着替えて、メイクをしてきたからここまで遅れてしまっただとか。
自分はそれを全く知らなかったので、驚いてしまった。
それを知って、嬉しくなった。

23時になり、ゲートへ。
中は4列しかない、小さな映画館。
しかも上映されたのはMission Impossibleではなく、ホラー映画。
人生初のホラー。
でも、ベトナムで、深夜に、ホラー映画を見る。23時から1時までの2時間、ホラー映画をベトナムで見るっていう思い出。これは一生消えないと思う。

Taoは余裕の表情で映画を見ていた。
僕が驚くたびに、ポップコーンを渡してくれる。
それが彼女なりの思いやりなのかもしれない。

映画が終わると、すぐに人が去っていく。
日本との違いを話しながら外へ出る。
彼女は明日も仕事があるので、バイクで帰り、僕は歩いて帰る。

誕生日や星座の話をして、バイバイ。

Taoは典型的な内向的な人だった。
自分の世界と理想を持ち、よく「Sorry」と言う。
理想と現実のギャップに、きっと苦しむこともあるんだろう。

それでも彼女の内側には、深くて、大きな宇宙が広がっていた。

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● Profile

Kota Ishihara(いしはら こうた)

近畿大学理工学部生命科学科卒業。卒業後は、Webサイト制作を独学で勉強し、2022年10月にフリーランスに。その後、海外に拠点を移すために海外視察を開始し、ヨーロッパ、東南アジアなどを一人で冒険をし、さまざまな人と交流する。将来の夢は、ヨーロッパに移住し、クリエイティブ・多国籍企業を作り、多種多様なクリエイティブプロジェクトをしていくと共に、パイロットになり世界を旅すること。音楽・ファッションなしでは生きられない。イヤホンにはとても辛口評価。尊敬する人は岡本太郎。

#同じ旅の余韻