湿った空気と、5時の目覚め
朝の5時、目覚ましが鳴るより先に目が覚めた。
なんだか、気分があまり良くない。夢を見たのかもしれない。変な夢。思い出せないけれど、胸の奥に残るざらついた感覚だけが残っていた。
ベッドと枕は、湿気をたっぷり吸い込んでいて、じっとりと冷たい。まるで空気までもが僕に「今日は違うよ」と囁いているようだった。心地悪さが、身体にも心にもまとわりついて離れない。
2時間後、また目が覚める。
誰かが、外にいる気がした。ホステルのベッドはカーテンで仕切られていて、外の様子は見えない。だけど確かに「気配」がある。それが不安で、レールを開けたくなる。
その時、胸の奥で何かがつぶやいた。「気分が良くないのは、外じゃなくて、自分の中の何かが湿っているからだよ」って。
朝8時、奇跡みたいな早起き
結局、朝の8時にベッドから這い出た。
僕にとって、これは事件みたいなことだ。何ヶ月ぶりだろう、朝8時に起きたのなんて。
寝癖もついたまま、髭も剃らず、歯磨きだけして、まあいっかって笑う。完璧すぎない自分を許す。そんな朝も、いいじゃないか。
ホステルの朝ごはんへ向かう途中、ふと考える。「僕のソーシャルアバターって何なんだろう?」って。
旅を始めてから、ずっと頭の片隅にあった問い。
僕が発信していきたいのは、きっと「自己実現するキャラクター」。
最初は失敗だらけだったけど、人と関わっていく中で変わっていく、そんなストーリー。
声も小さくて、何を話していいかわからなかったあの頃から、少しずつ変わってきた。旅が、僕を解きほぐしてくれている。人との関係が、僕を育ててくれている。
ぼろぼろのホステルで、優しい朝ごはん
このホステルは、かつては朝食バイキングがあって、ギターの音が響くライブまであった。
でも今はもう、その面影はない。ボロボロで、朝食も簡素で、なんだか寂しい。

だけど、それでも「人」は温かかった。
おじさんが持ってきてくれたスクランブルエッグとベーコン、パンとバター、バナナ。それは、どこか子どものころの朝ごはんみたいで、可愛かった。
雨が降っていたせいで、座れる席は限られていた。僕は入り口のすぐそばに座る。
「今日は何しよう」「仕事はどんな感じだったっけ」
そんなことを考えていると、1人の女性が、僕の隣に座った。
一期一会の会話

これは、チャンスだ。
「Hi, Good morning!」と声をかける。
Where are you from?
僕にとっては、これで「第2ステージ」クリアだ。
そこから始まった1時間の会話。
話が途切れても、沈黙が気まずくならないように、お水を飲んだりして雰囲気を調整した。
無理に繋がなくてもいい。ただ、話したいときに話す。話題がなければ、それもまた良し。そう思えるようになったのは、大きな成長だ。
彼女はオランダから来ていて、Uniqloで働いていて、フィッティングルームの仕事が一番好きだと言っていた。
時間が早く過ぎていくから。
そんな何気ない会話が、なんだかとても愛おしかった。
そしてイタリアの話。
「カプチーノは正午まででしょ?」
「ピザにパイナップルは乗せないんでしょ?」
くだらないけど、楽しい。そんな会話が、旅先での一期一会にはぴったりだ。
最後に、ノートを持ってきて、彼女に一言メッセージを書いてもらった。インスタも交換した。名前も聞けた。
これまでの僕にはできなかったこと。それが、今日できた。小さな一歩。だけど、確かな一歩。

雨と、静けさと、自分

部屋に戻って仕事をする。外は雨。なぜか、心が落ち着いている。

みんなビーチに行けず、ホテルに避難しているからかな。

「楽しそうな他人」を見ていると、羨ましくなる。
でも、今日はそれがない。不思議と、静かな気持ちだった。

外に出て、El Nidoのメインストリートを歩く。

チキンの丸焼き、にぎやかなパン屋、10ペソのパン。

浜辺を歩きながら、パンをかじる。美味しい。
誰かとじゃないと楽しくないから、今日はアイランドホッピングはしないことにした。
それでいい。完璧を求めない。
新しい味との出会い
雨宿りのために入ったレストランで、普段なら絶対に頼まない海鮮料理を注文する。
イカも貝も、カニもあまり得意じゃない。だけど、今日はあえて挑戦してみた。

その中の貝が、めちゃくちゃジューシーで、最高に美味しかった。
「うまい!」って、心の中で叫んだ。
新しい味覚との出会いは、旅の中での大きな喜びのひとつ。
帰り道と、笑顔の余韻

トライシクルに乗って帰る途中、水を3本買うために近くのお店へ寄る。
そこにいた小さな女の子が「Are you Chinese?」と聞いてきた。
悲しいけれど、微笑んで「I’m from Japan」と答える。
最後に思う。
フィリピンの人たちは、本当に気さくだ。
特に田舎にいる人たちは、目を見て話してくれるし、笑顔が自然で、優しい。
その姿を見て、僕もそうなりたいと思った。




