会いたかった人に、会えなくなった。
バスの中でその連絡を受けた瞬間、窓の外に広がる山並みがどこか遠いものに見えた。頭の中でずっと描いていたシナリオが、一瞬で消える感覚。何度経験しても、慣れない。
それでも、バスは走り続ける。フェトヒエへ向けて、3時間。
アンタルヤ最後のロカンタ飯、150リラ
11時5分、ホステルをチェックアウト。
荷物を30分だけ置かせてもらって、昨日入れなかったレストランへ向かった。おじさんたちで席が埋まっていて入れなかったあの店。ロカンタ——トルコのローカル食堂だ。
店に入ると、僕一人だけが観光客だった。それ以外はみんな、地元のおじちゃんたち。一人一人が一つのテーブルに座って、同じ向きで黙々と食べている。まるで社員食堂。

150リラ(≒700JPY)。破格。
テーブルの上にはプラスチックケースに入ったパンが置かれていた。

一見まずそうに見える。でも、これこそがローカル感があって好きだ。
ミートボールとじゃがいものトマト煮込み、それにライスを注文。10分で食べ終えて、お会計。なんと150リラだった。本当に破格。
急いでホステルに荷物を取りに戻り、トラムでバスターミナルへ向かった。今日は日差しがものすごく強い。アンタルヤはこの暑さと光の強さが好きだ。僕は太陽が好きだ。
アンタルヤからフェトヒエ(Fethiye)へ、3時間のバス
バスターミナルに着いて、お目当てのバスを見つけた。無事に乗車。一安心。
バスの中はトルコの人がほとんどで、一部韓国人もいた。日本人は僕だけ。

ほぼ満席。
途中、バスが止まった。窓の外を見ると、蛍光ベストの警察官と麻薬探知犬が車道を歩いている。
予期しない光景。犬と検問の人が待ち構えていて、すべてチェックしていた。僕がパスポートを見せると、2秒でグッド。終わり。日本はやっぱり最強だなぁって思ったと同時に、先人たちに感謝だった。
しばらく止まってから、また走り出した。車窓から見えるトルコの山々は、雪を被った峰まで連なっていて、息をのむほどきれいだった。

雪山まで見える。
途中、遊牧民と羊の群れが道沿いに続く場面もあった。可愛かった。
バスの中で、崩れた予定
バスに乗っているあいだ、ずっと考えていたことがある。
フェトヒエで会う予定だったトルコ人の子が、急遽来られなくなった。連絡を受けたのは、ちょうどバスが走り始めたころだった。
彼女とはHelloTalkで知り合った。ジョージアに滞在していたころ、「トルコに行くから、現地で会える人がいないかな」と探していて、見つけた。毎日メッセージを交わした。好きとかそういう感情ではなかったけれど、だんだんと心理的に近い存在になっていって、会えたらいいなという気持ちが少しずつ膨らんでいた。
どんな話をしようか。どこへ案内してもらえるだろうか。頭の中でいろいろと思い描いていた。だから、崩れた瞬間はすごく悲しかった。心がまた、固く、崩れそうになった。
何度経験しているんだろう、って。
期待してはいけないとわかっている。期待するほどうまくいかない。期待しなければ、傷つかない。それは理屈としてわかっている。
でも僕は、人間が大好きだから、どうしても頭の中で想像して期待を膨らませてしまう。これはライフステージレベルでの課題だな、と思った。たぶん一生、付き合い続けるものだ。
23キロを背負って、フェトヒエを歩いて入城
バスターミナルに着いて、タクシーの運転手に声をかけられた。
「1キロ350リラ」
さすがに高すぎる。歩いていくことにした。
15キロと8キロのバックパックを背負って、歩き始める。気温24℃。シャツが背中に貼りついた。46分のルート。でも、街を楽しもうじゃないかって思ったら、むしろ歩いていくほうが楽しいだろう。

汗だくで歩く。
街を歩いていると、フェトヒエの雰囲気が掴めてきた。小さな街なのに、しっかりしている。レゴが売っていたり、洗練されたファッションの店が並んでいたり。このスケールのギャップに、素直に驚いた。空港もない。アクセスも良くない。なのに、ローカルの人たちは僕がここにいても何もおかしくないような感じにふるまっていた。
中心部に着いてお腹も空いていたので、人が入っているドネルケバブの店に入った。

毎回、Ayranも一緒に頼む。
ドネルケバブは、いつ食べても外れがない。
少し休憩してから、また歩き始めた。若者が多くて、みんなファッションも洗練されている。お腹を出したTシャツにジーパン——僕の好きなスタイルだ。バックパック旅だとファッションに気を使えないのが残念だけど、将来また来るときは、もっとかっこいい格好でこの街を歩きたい。そんなオーラを放った人になっていたい。
丘の上のホステル、ロシア人の隣人
ホステルは丘の上にあった。
到着する頃には全身汗だく。チェックインして3人部屋に入ると、先客のロシア人がいた。先に声をかけた。ロシア語で挨拶する。
彼は今日、歯のインプラント手術をしたらしい。ロシアより安いのでフェトヒエまで来たのだと言っていた。痛くてあまり話せない、と。
それでも少し話して、街へ出た。
波止場と、ヨットの群れ
フェトヒエ(Fethiye)は山々に囲まれながら、波止場がある。

海と街と山が、一枚の絵になっている。
波止場を歩いてみた。
まだ、考えていた。
ヨットの数が半端じゃない。完全にリゾート地だ。

トルコの旗がはためく。
ここはロシア人がすごく多かった。街を歩いていてもローカルというより、リゾートの空気が漂っている。高級なアパートやヴィラの建築、専用の走路、広場に響く子供の声。どこか別の国に来たみたいだった。
パブの3階から見た景色は、本当にきれいだった。

モナコ、こんな感じなのかな(モナコには行ったことないけど)。
ここに住みたいかと言われれば、そうじゃない。でも大好きなパートナーと1週間、溜まったビジネスを少しこなしながらゆっくり過ごす——そういう使い方なら最高だ。将来、そういう働き方をしていたいな、と思った。
İskenderと、溶けたバター
夜ごはんはİskenderと決めていた。
トルコ料理の中でも特に好きなやつ。牛肉とパンの上に、溶かしたバターを回しかける。このバターが絶妙で、これがなければİskenderじゃない。500リラの店は高かったので、チキンİskenderで250リラの店へ。まあ、悪くない。

このバターが、全部を決める。
食べながら、ファッションについてChatGPTにいろいろ質問していた。こういう街に来ると、自分が旅人である事実を突きつけられる気がする。
フェトヒエの夜、星がきれいだった
歩いてホステルに戻る。
夜風が気持ちいい。夜はやや肌寒かった。
この街の空気。
1日しかいないけど、フェトヒエは活気があった。若者が多くて、商店街が連なっていて、マクドナルドもスタバもある。
この小さな町に、だ。トルコの経済は不安定と言われているけど、少なくともここは本当に発展していた。まるでフランスの小さな町のようだった。
星がきれいだった。
26歳で、こんな場所に来て、いろんなものを見て感じることができる。
それだけで、今日はよかった。




